もし太陽がブラックホールになったら?
太陽を直径6 kmのブラックホールに押し縮めると、惑星は軌道を保つが、光と熱は失われる
仮説です。物理学の上では可能ですが、実際に見た人はいません。表示はすべて現在の理論に基づきます。
ステップごとに
引力は同じ
ニュートンは1687年、丸い物体の外側では、その引力は全質量が中心に集まっている場合と同じだと示しました。殻の定理です。アインシュタインの重力理論も、1923年のバーコフの定理によって同じことを言います。丸い質量の外では、内側の質量が何をしていても空間の形は変わりません。ですから太陽1個分のブラックホールは、今の太陽とまったく同じように地球を引きます。
変わるのは二つだけです。日の光がなくなり、太陽の熱がなくなります。この話の続きは、それが何を意味するかを、測定された数値で計算したものです。こんなことは一度も起きたことがなく、私たちの太陽に起こることもありえません。
どうすれば作れるか
自然は太陽にこれをすることができません。ブラックホールは、太陽の約20倍を超える星が燃料を使い果たし、中心核が自らの重さでつぶれるときに生まれます。残ったものが太陽の約2.3倍より重くなければ、中性子星で止まります。知られている最も重い中性子星PSR J0952−0607は太陽の2.35倍です(ロマーニほか、2022年)。
ですからこれは思考実験です。太陽を同じ質量のブラックホールにそっくり置き換えるだけです。本当に押し縮めれば、太陽が一生に出すエネルギーの数百倍が解き放たれますが、ここではそれは考えません。図では縮む様子を可変の縮尺で示しています。
8分間の日の光
引力の変化はもっと早く地球に伝わるでしょうか?重力の変化も光の速さで伝わります。2017年、中性子星の衝突GW170817の重力波は、1億3000万年の旅のあと、その光と2秒以内の差で届きました。ただしここでは、伝わるべき変化がありません。ブラックホールは太陽と同じように引くのです。
月や惑星は太陽の光で輝いているだけなので、これらも消えます。それぞれ、最後の反射光が届いたときにです。月は太陽から3秒以内、木星は1時間以上あと、海王星は約8時間あとです。
黒い空
散乱させる日の光がないので、空気はもう青く光らず、昼の空は夜と同じく真っ黒になります。月は消え、星を隠すところでしか分かりません。ブラックホールは小さすぎて図に描けないので、その場所に印をつけています。
寒さ
そこまでどれだけ速く下がるかは、簡単なモデルで計算しています。下から熱を運び上げる岩石と、その上で熱を宇宙へ逃がす大気です。寒さで水蒸気が、やがて二酸化炭素も空気から凍り出すにつれ、温室効果は弱まります。海から暖かさを運ぶ風は、はじめのうち陸の冷え方をゆるめるはずですが、考えていません。
海が凍りつく
ですから海は1年や1世紀で凍りきりはしません。氷のふたの下で、液体の水が何万年も残るのです。温度や氷の厚さはこのモデルによるもので、もっと詳しいモデルでは多少違う値になるかもしれません。
暗闇の生命
地上の生命は、植物が日の光で作る食べ物に頼っているので、数か月のうちに死に絶えるでしょう。けれども、太陽をまったく必要としなかった生命もあります。海底や地下深くで、岩石から出る化学物質を糧にしているのです。
1977年、潜水艇アルビンはガラパゴス諸島近くの太平洋の海底で熱水噴出孔を見つけました。そこには巨大なチューブワーム、二枚貝、カニがひしめいていました。彼らが頼る微生物は、岩石から湧き上がる水に含まれる硫化水素からエネルギーを得ていて、光は使いません。
それでも、そうした微生物の多くや動物たちは、植物が日の光で作り海に溶けた酸素を呼吸しています。太陽がなければ酸素はもう作られないので、それが減るにつれ噴出孔の大きな動物は死に絶えます。酸素のいらない微生物は生き続けるでしょう。
さらに深く、2008年には南アフリカの金鉱の地下2.8 kmで、ただ1種で暮らす細菌Desulforudis audaxviatorが見つかりました。岩石の放射能で分解された水を糧にしています(チヴィアンほか)。このような生命なら、暗闇の中で何百万年も続くことができます。
間近で
イベント・ホライズン・テレスコープが撮影したブラックホール、2019年のM87*と2022年のいて座A*は、光の輪を見せています。ガスが落ち込んで熱せられているからです。太陽のブラックホールの周りはほとんど空っぽなので、輝きはありません。空をどう曲げるかでしか見えないのです。
図の中の星の光の曲がり方は、一般相対性理論に従って光線ごとに計算しています。星そのものは描いたもので、空は実際より明るく描いています。暗闇に長く慣れた目で見たように。
引き裂かれる
さらに近づくと、事象の地平面に着くずっと前に、体は細長い糸のように引き伸ばされます。天文学者はこれをスパゲッティ化と呼びます。かつて太陽の表面があった69万6000 kmのところでは、引き伸ばしは地球の重力の100万分の1にも足りません。潮汐力はどれだけ近いかで決まり、ブラックホールがどれだけ小さいかでは決まりません。
大きなブラックホールは、ふちではおだやかです。400万倍重いいて座A*の事象の地平面では、人にかかる引き伸ばしは地球の重力よりはるかに小さく、何も感じずに越えられるでしょう。図の輪は、引き伸ばしが地球の重力の1倍と10倍になる場所を示しています。
本当に起こること
星がブラックホールになるのは、生まれたときの質量が太陽の約20倍を超える場合だけです。太陽はそうではなく、中心核の水素を使い果たし、今の約200倍の幅にふくらみ、外側の層を吹き飛ばします。熱い中心核は地球ほどの大きさの白色矮星として残り、何兆年もかけてゆっくり冷えていきます。
地球は、先に赤色巨星に飲み込まれなければ、その周りを回り続け、夜空には太陽の代わりに小さく薄れていく白い星が浮かぶでしょう。「現象」のシミュレーション「太陽の死」で、本当の終わり方が見られます。
知られている最も近いブラックホールGaia BH1は1560光年先にあります(エル=バドリほか、2023年)。太陽の10倍重く、太陽に似た星がその周りを回っています。ちょうど、ブラックホールになった太陽の周りを地球が回るように。
この物語の天体
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