太陽の死
太陽が赤色巨星へとふくらみ、やがて白色矮星となって消えていくまで
ステップごとに
今日の太陽
太陽は46億歳で、一生のおよそ半分を過ぎたところです。その中心核は毎秒およそ6億トンの水素をヘリウムに変え、そのとき生まれるエネルギーで輝き続けています。
中心核の奥深く、およそ1500万°Cのなかで、水素の原子核がぶつかり合い、ヘリウムに融合します。そのたびにわずかな質量が消えてエネルギーになります。アインシュタインのE = mc²のとおりで、毎秒およそ400万トンです。このエネルギーが私たちに見える表面までたどり着くには、何千年もかかります。
星が年老いていく様子を何十億年も待って見ることは誰にもできませんが、その必要もありません。空には、生まれたばかりのものから死んだものまで、一生のあらゆる段階にある、太陽と同じくらいの質量の星が満ちています。それらすべてで確かめられた、星のしくみのコンピューターモデルが、ここからの物語を語ります。
ここでの大きさ、温度、時期は、クラウス=ペーター・シュレーダーとロバート・コノン・スミスによるそうした太陽のモデルの一つにもとづいています。このモデルは、太陽が最後の外層を脱ぎ捨てるまでを追っています。
どんどん明るく
中心核にヘリウムがたまるにつれ、太陽はゆっくりと明るくなり、10億年ごとに約10%ずつ明るさを増します。およそ10億年後には、それで地球の海が沸騰して干上がってしまいます。
太陽の火の燃えかすであるヘリウムが中心核にたまっていきます。すると中心核はさらに押し縮められて熱くなり、水素の融合が速まって、太陽はより明るく輝きます。生まれたときの太陽は、今日のおよそ70%の明るさしかありませんでした。
緑の輪はハビタブルゾーンで、地球のような惑星が液体の水を保てる場所です。太陽が明るくなると、この輪は外へ移ります。およそ10億年後、その内側の縁が地球を越えます。空気は熱をさらに閉じこめる水蒸気で満ち、海は沸騰して蒸発しはじめます。上空では日光が水を分解し、その水素は宇宙へ逃げていきます。
この段階の終わり、今からおよそ54億年後には、太陽は今日のほぼ2倍明るくなり、ハビタブルゾーンは火星の軌道まで移っています。
中心核の燃料が尽きる
およそ54億年後、中心核の水素が使い果たされます。中心核は縮んで熱くなり、そのまわりの殻で水素が燃え続け、太陽の外層はふくらみはじめます。
中心に燃料がなくなると、ヘリウムの中心核は自分を支えきれず、縮みはじめます。押し縮められると熱くなり、その熱がまわりの薄い殻の水素に火をつけます。この殻は、中心核がかつて燃えたよりも速く燃えます。
余分なエネルギーが太陽の外層を外へ押し出します。外層は広がりながら冷え、太陽は黄白色からオレンジ色へと変わります。破線の円は今日の大きさです。
どの星も中心核の水素が尽きるとこの段階に来ます。重い星ほど早く来ます。太陽の2倍の質量の星はおよそ10億年でここに達し、最も小さな赤色矮星は何兆年も輝き続けます。宇宙がこれまで存在してきたよりはるかに長い時間です。
赤色巨星
表面の重力は今日のおよそ10万分の1になります。そこでは沸き立つガスがいくつかの巨大なセルで湧き上がり、その一つ一つが地球から太陽までの距離ほどの幅があります。2017年、チリのVLT望遠鏡が赤色巨星つる座π¹でそのようなセルを捉えました。
これほど弱くしか引き止められていない表面は、たやすく吹き飛ばされます。太陽が最大になる前に、強い風がその質量の3分の1を運び去ります。引っぱる質量が減ったので、惑星の軌道は広がります。
地球の運命
そのずっと前に、地球は焼けただれ、溶けた世界になっているでしょう。太陽が今の1000倍明るくなれば、地球に届く熱で岩が溶けるほどになります。
巨星の近くを回る惑星は、月が地球の海に潮の満ち引きを起こすように、巨星にふくらみを起こします。そのふくらみの引力が惑星の動きを遅らせ、惑星はらせんを描いて内側へ落ちていきます。シュレーダーとスミスのモデルでは、これが地球の軌道の広がりに勝ち、地球は金星の100万年後にのみこまれます。
質量の失い方が異なる別のモデルでは、地球はより広い軌道で逃げのびます。きわどい競争で、答えは巨星がどのように質量を失うかにかかっており、それはまだ測定が続いています。
ヘリウムフラッシュ
頂点で中心核はおよそ1億°Cに達し、ヘリウムが一気に、閃光のように融合しはじめます。その後、太陽は今日のおよそ11倍の大きさまで縮み、1億年以上ヘリウムを燃やします。
ヘリウムが炭素と酸素に融合するには、およそ1億°Cが必要です。このころ太陽のヘリウムの中心核はとても密に詰まっていて、熱せられてもガスのように膨張して冷えることがありません。そのためヘリウムの融合がはじまると暴走します。数秒のあいだ、中心核は銀河まるごとひとつほどのエネルギーを生み出します。
そのエネルギーは少しも外へ出ません。中心核をゆるめるのに使われ、表面には何も現れません。その後、中心核は落ち着いてヘリウムを燃やし、太陽は安定します。赤色巨星のころよりずっと小さいものの、今日よりまだ50倍ほど明るい姿です。
この段階の星はよく見られます。星の色と明るさを表す図の上で、ひとかたまりに集まったり、古い星団では天文学者が水平分枝と呼ぶ帯に並んだりします。
ふたたび巨星に
中心核のヘリウムも尽きると、太陽はふたたび巨星へとふくらみます。今度は炭素と酸素でできた中心核のまわりにです。およそ10万年ごとに燃えている殻が燃え上がり、外層を吹き飛ばします。
今はヘリウムが炭素と酸素の中心核を包む殻で、水素がその外側の別の殻で燃えています。二つは交互に働きます。水素の殻がヘリウムをためこみ、やがてヘリウムの殻が燃え上がる、これが熱パルスです。そしてまた落ち着きます。
今回、太陽は今日のおよそ180倍まで大きくなりますが、赤色巨星のときよりは小さいので、火星とその外側の惑星は助かります。残った質量の5分の1近くを、ガスと塵のゆるやかな風で失います。
このように死にゆく巨星は、ガスと塵の殻に包まれています。赤色巨星ちょうこくしつ座Rのまわりでは、ALMA望遠鏡が、こうしたパルスの一つで放出された殻を捉えました。私たちの銀河の塵の多くは、このような風の中で生まれました。
輝く雲
惑星状星雲は惑星とは何の関係もありません。昔の望遠鏡では、惑星のように丸く見えたのです。私たちの銀河では数千個が知られていて、どれも太陽のような星の最後の息です。
むき出しの中心核は主に紫外線で輝き、その光がガスの原子から電子をはぎ取ります。原子がふたたび電子を捕まえると、元素ごとに固有の色で光ります。熱い中心核の近くでは酸素が青緑に、その外側では水素と窒素が赤く輝きます。ここでの色も、実在の星雲と同じくこのパターンにしたがっています。
長いあいだ天文学者は、太陽ほど軽い星では目に見える星雲はできないと考えていました。中心核の温度の上がり方が遅すぎて、ガスは照らされる前に散ってしまうというのです。2018年に発表された新しいモデルは、十分に速く熱くなることを示しています。太陽の星雲は淡いものになりますが、ほかの銀河から見えるほどには明るいでしょう。
ガスは毎秒数十キロメートルの速さで外へ飛び去ります。およそ10,000年たつと、輝くには薄くなりすぎて銀河へ散っていき、いつか新しい星や惑星の一部になるかもしれません。
白色矮星
白色矮星はとても密度が高く、ティースプーン1杯で車1台ほどの重さになります。それを支えているのは電子だけです。自然が許す限り詰めこまれた電子は、それ以上押し縮められることに抵抗します。
電子が支えられるものにも限りがあります。白色矮星は太陽のおよそ1.4倍より重くはなれません。それを超えると電子さえも持ちこたえられず、星はさらにつぶれていきます。
夜空で最も明るい星の伴星シリウスBは、このような白色矮星で、質量は太陽と同じくらい、大きさは地球より小さいのです。
ゆっくりと消えていく
生き残った惑星は、今日のほぼ2倍の幅の軌道で白色矮星のまわりを回ります。数十億年かけて白色矮星は冷え、暗くなっていきます。宇宙のどの白色矮星も、まだ暗くなりきる時間はたっていません。
白色矮星は残った熱だけで輝きます。はじめは速く、やがてどんどんゆっくりと冷えていきます。知られている最も古い白色矮星はおよそ100億年冷え続けていて、今もかすかに光っています。冷たく暗い黒色矮星になるまで冷えるには、宇宙がこれまで存在してきたよりはるかに長い時間がかかります。
多くの白色矮星には、岩石の塵が降りそそいでいます。小惑星や惑星の残骸です。まだ惑星を持つものもあり、2020年には白色矮星WD 1856+534を回る木星ほどの大きさの惑星が見つかりました。
この物語の天体
ほかのシミュレーション
- S301:知られている中で最も速い星
- シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突
- 恐竜を絶滅させた小惑星
- 星はどう生まれるか
- パルサー
- 地球の磁気シールド
- 引き裂かれる星
- 大質量星の爆発
- Ia型超新星
- ブラックホールのでき方
- 2つのブラックホールの合体
- 2つの中性子星の衝突
- マグネター
- クエーサー
- 重力レンズ
- 最も明るいガンマ線バースト
- 天の川銀河とアンドロメダの出会い
- ビッグバン